彼らは一体どうしてこんなに人気があるのか?

そして、このチームの行く末は…?
誰か教えて。

 

 

 98年ツールの一連のドーピング問題の引き金役となってしまったフェスティナ。それでもこのチームの人気と魅力は決して変わらない。

 フェスティナの魅力。それはまるで、小学生の女の子がいきなりジャニーズ系アイドル達に魅せられミーハーに目覚めさせられてしまったかのような、分かりやすく単純でかつ強烈な魅力である。
 これにやられてしまったら、うちわとペンライトを振り回す近眼的ミーハーな方々も馬鹿には出来ない。ジャニーズJr.を待ち構えて六本木の駅に張り込んでいる女の子と、その心模様は変わらないのである。
 その熱狂ミーハーな渦の中心に居るのは、間違いなく、フランスの王子様、リシャール・ヴィランクである。
 彼のその「魅力」に関してはチームメイトはおろか他チームの人間も認める所である。チームメイトであるデュフォーやエルベ、モロー等のインタビューを読むと、そこにはヴィランクへの賛辞のような言葉が入っているのである。そして口をそろえて言う。「彼はチームのムードメーカーであって、皆のアイドルなのさ。」
 
つまり、やっぱりアイドルなのである。歌が下手なところもますますアイドルっぽい。

 現在のフェスティナにヴィランクが居ないことは考えられない。リーダー的人物の居ないアイドルグループは惹き付けるものも少ない。しかし、フェスティナ自体が存続することももう分からない。こんな形で、僕たち私たちのアイドルを失うことは悲しい。
 彼らはどうなるんだろう。この気持ちも、どうなるんだろう…。

 

Irlande
アイルランドにて

前夜祭で終わった
私のフェスティナ…

上段;ダブリン・キャッスルでの前夜祭。裏口は超真近で選手を見れるサンクチュアリと化していた。
その後ぱたりと彼らに会うことが出来なくなるなんて予想だにしていなかった。あんなにそばに居たのに。
ところでディアブロのおっちゃんがツェーレの後ろに入ってしまいました(笑)。彼はアイルランドでは知名度が低いのでさびしそうだった。「げんき?」と話し掛けたら「うん元気だよ」。でも、はっきり言ってもろカラ元気だった。

下段;第2ステージのスタート地点エニスコーティでの王子様。背中にかわいくチーム賞の子ライオンを入れているが、チームの薬物所持の発覚で監督ブリュノー・リュセルが苦しい記者会見を行った翌日である。



気になったこと…アイルランドで

 前夜祭で見た彼は、元気そうに見えなかった。ディアブロではなく、デュフォーである。
 フェスティナのフランス人勢がみんなヴィランクにおそろいの銀髪で会場から出てきたのを見た瞬間、なるほど面白い流石だなあと思えたが、その後から続いて出てきたデュフォーの髪はいつもどうりで、ちょっと私を驚かした。何故なら、私はフェスティナの中で、主役(本当はツールの時だけだけど)であるヴィランクと一番仲が良いのはこのデュフォーだと思っていたからである。
 今までの予備知識としてその仲の良さっぷりは、「ホテルはいつも二人一緒の部屋」「監督からいいかげん離れろと言われるほど」etc…。97年ツールでも、第14ステージでヴィランクが勝利した時、その1分19秒後れで彼はゴールしたすぐ次の瞬間、インタビューを受けていたヴィランクのもとに向かいほっぺたを「ぽんぽん」とやさしく触れに来たのである(そのシーンは私は大好きである。)。
 そんなツーショットが私の中では当たり前だったのに、スイス人であるからなのか?デュフォーの髪は他のチームメイトのように染められてはいなかったのである。
 同じくスイス人のツェーレはドイツ語圏のひとであるし入ってきたばかりだし、何より別格である選手だから染めてないのも分からなくない。でも…フランス語を話し、ヴィランクともあんなに仲の良かったデュフォーが何故?
 髪を染めてないくらいならば、まだそこまで疑問には思わない。私が不安に思ったのは、デュフォーの表情が明るくなかったからなのだ。
 ブロシャールやモロー、ルース、エルベらは、絶えずニコニコしていた。上の映像でも彼らは笑っているが、デュフォーの表情は硬く、笑顔はなかった。彼はいち早く足早にその場を去っていった。ヴィランクを含む銀髪集団はまだしばらく見ることが出来た。
 その場になじまず足早に去ったデュフォー。
 私は不安にさせられた。

 もし本当にデュフォーが孤立しているなら、エースの座の争いというのもあっただろう。98年デュフォーはツールドロマンディやミディリーブル等で勝利しまさに波に乗っていた。フェスティナのチームとしてはジロをツェーレ、ツールはヴィランク、ヴェルタをデュフォー、という予定だったらしい。しかし、ツールドフランスを前にしてデュフォーの調子は俄然上がった。ツールは、ヴィランクではなくデュフォーで…。そんな考えが監督の頭の中に無いことは無かっただろう。ヴィランクには山岳の水玉ジャージを着せておいて、総合では…と。
 ヴィランクはその事を察してまるで先手を打ったかのように、フランス人で味方を固めてしまおうとしたのだろうか…?彼は水玉ではなくマイヨジョーヌをあくまで狙っているつもりだから。エースの座を守る為に…。

 それらは私の考えすぎ、あるいは浅はかな考えだったのかもしれない。
 しかし翌々日の第1ステージダブリン、もうすぐスタート時間という所で選手達がスタート地点に集まってくる所でだった。
 モローとルースはいつも大体一緒に居ることが多いのだが、そこへブロシャールとエルベ。ヴィランクは前のほうに居る。周りには他のチームのフランス人らがいる。集団の後方だった。
 そこへデュフォーが遅れてやって来た。そして、バイクにまたがった彼は、まるでひっそりと、エルベの影に入るようにそおっ、とついたのである。
 私はさすがに愕然とした。
 あの強くやさしい(と私は思っている)デュフォーが、所在なげに、ベテランでチームのまとめ役であるエルベに頼るように…と、いうよりも他のチームメイトからエルベを挟んで避けるように、位置についたように見えたのである。

 翌日第2ステージスタート地点エニスコーティ。ちほちゃんが「デュフォーの左耳の付け根のとこ、見てみて」と言ってくれた。彼の耳の根元には3つの小さな針のような者が付いて?刺さって?いた。
 またその翌日彼女と一緒に、リゾスコッティでマッサージャーをしている中野氏とお話する機会がありその耳の根元の針のことを伺った。そのいわゆる「ツボ」は、顔面神経の通る所だというのである。
 その頃ちょうどドーピング事件の真っ盛りのこと。ドーピングと顔面神経は直接関係はないが、私は思わず、デュフォーはストレスで顔面神経が引きつりを起こしてしまったんではないかしらと本気で心配した。チーム内の孤立がもしかあったとして、さらにドーピング疑惑…。私は本当に彼を心配したのである。

 やがて、疑惑は真実となり、彼らはツールを去らねばならない状況となった。
 第7ステージ個人タイムトライアル出走停止。
 コレーズの村の小さなカフェで行われた記者会見のビデオが流れた。ヴィランクは涙ぐんでマイクを握っていた。弱ってしまっている彼のその隣に、デュフォーが居た。
 私が98年ツールで見た、最初で最後の「ツーショット」だった。

 私は正直、ヴィランクが涙ぐんでいても彼に対する哀れみの感情が起きなかった。それは私の思い込みであろうけれど、彼の涙は、少し役者じみて感じられた。
 ばっかやろー、泣きたいのは、お前だけじゃないはずだぞ?
 そういう風に言ってしまいたかった。
 でもきっと私は考えすぎていたんだろうと思う。想像したような嫌な出来事はなかったのだと…。


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