DIMANCHE 15 OCTOBRE 2000 

 

 

【世界選手権ロード実況】

 フランスのパリから530Km西に位置するブルターニュ地方の小さな町プルエーで1周14、15Kmのコースを19周する総距離268.85Kmで世界選手権ロードレースが行われている。残念ながら、日本からは出場枠が取れなかったため、誰も参加していない。

 今日のレースをベルギーのトニステイナーで活躍中の三船雅彦選手が予想してくれた。

「今年のコースはそれほどきつくはなさそう。ただ、女子のレースの時のように雨が降ると、かなりのサバイバルレースになりそうだ。この時期ただでさえ寒いのに、西ヨーロッパは寒気が流れ込んでいて、結構冷え込んでいる。ブルータニュで雨なんて考えただけで指がかじかみそう…。(東ヨーロッパは暖かい空気が押し込まれて、25度以上あるというのに…)
 今年の本命はやはりバルトリかな。それに対抗チミル。それにフレイレ、カメンジンドあたりの戦いになりそう。イタリア、フランス、スペインは組織力も高そうだけど、ベルギー、オランダはちょっと弱い印象を受けるね。
 ベルギーはミュセウ、ステールスがいないのが辛い。スプリントになればファンペーテヘムが可能性高いけど、アシスト力、集団を支配する力が他の国に比べて1ランク劣るというのが痛い。パリ〜ツールでのチミルの走りを見ても、自力はあるけどあくまで独走が勝ちパターン。一昔前のスプリント力はない。どれだけベルギーのアシスト陣が、チミル後からを温存できるかは疑問。
 フランスは見ている限り絶対的なエースが不在。フランスらしい組織力で挑むという見方が正しいかも(このコース自体がコントロールしやすそうだし、フランスにもチャンスありか??)ジャラベールはちょっと調子悪そうだし読めないな・・・。
 ドイツは土壇場でウルリッヒ、ザベル、クローデンが辞退したのが痛い。この3人がいなかったら、10年前のドイツ(西ドイツ)と何ら変わらない。
ま、バルトリとイタリアの動き次第(結局いつもと一緒??)だろう。
意外なところでイヴァノフ(ロシア/ファルムフリッツ)、ホイ(デンマーク/ラ・フランセーズ・デ・ジュ)、ヴィノクロフ(カザフスタン/テレコム)あたりが来るかも。」

 10時30分、158選手がスタートした。雨は降っていないが気温は寒く、今にも雨が降りそうな天気だ。1周14,15キロのコースは、9,6キロから11キロにあるティマレクの坂が見所だ。ここで、アタックがかけられるはず。
 1周目は時速約37Km。レースは始まったばかりなので、選手たちは話しながらのんびり走る。2周目もほぼ同じ時速で通過。 (11時37分現在) 
今日は7時間にも渡るテレビ中継です。ヒョエ〜。今から少しお昼休みで、13時よりまた中継が始まります。三船選手は、こんな寒い曇りの日にも練習に行っているので、電話インタビューは後半でしょうか?では、のちほど。

 モロー(フランス、フェスティナ)がアタックをかけ、集団から9人の逃げグループが形成された。7周目でトップと集団との差は6分29秒、時速は42キロだ。フランス代表に選ばれなかったジャッキー・デュランは、レースを観に来ており、いち観客としてレースを楽しんでいる。トップグループは、フランス選手が2人(モロー、ベネトー)、スペイン選手が2人(E・ヒメネス、ディアズフスト)、スイス(ブシャ)、イタリア(ディルーカ)、ベルギー(マリシャル)、オランダ(プロンク)、ロシア(レレキン)が各1人。集団はポーランド人が4人で引いている。なぜゆえ、ポーランド人なのだろう?8周目を終わって、トップと集団との差は5分29秒。(13時25分現在)

 9周目を終わって、トップ9選手と集団は4分51秒差。集団は相変わらず、ポーランド人が引いている。集団でマッタン(ベルギー)がパンク。集団は加速中なので、マッタンにとっては災難だ。このマッタン、7月の終わりに同じコースで行われたGPウエストフランスでは2位になっている。今日はチミルの強力なアシストだ。トップから4分19秒遅れて集団が通過し11周目に入る。(14時現在)

 L・ジャラベール(フランス)がメカニックのトラブルで集団から遅れた。ウロー(フランス)がアシストにつき、ジャラベールを集団に導く。トップの9選手は12周目に入る。3分33秒遅れで集団も12周目へ。徐々に差は縮まっている。ここで、お電話タイム!三船選手に電話して今のレース状況を聞いてみました。「先頭にベルギー、オランダ、イタリアが一人づつしかいないから、この3カ国の選手が集団から動くはず。集団は、ポーランドが力尽きるまでもう少しこのままじゃないかな。例年だいたい動きが見られるのは残り80キロを切ってからだから、それくらいで集団に動きがあるはず。」という事です。先頭からマリシャル(ベルギー)がアタックし、モロー(フランス)、ディルーカ(イタリア)、ブシャ(スイス)、プロンク(オランダ)の5選手がついていく。これでトップは5選手となり13周目に入った。残り約100キロだ。(14時40分現在)

 遅れた4選手(ベネトー、E・ヒメネス、ディアズフスト、レレキン)は、集団に捕まった。集団で落車が発生。集団からグティエレス(スペイン)が加速した。でも、誰もついて行かず。ポーランド人もアタックスするが、ティマレクの坂でベッティーニ(イタリア)のアタックにより、2人はあっという間に消え去った。続いてシモニ(イタリア)が集団のトップにきた。次は、ヴィノクロフ(カザフスタン)だ。この加速で集団の選手はふるいにかけられる。トップの5選手は14周目に突入。2分8秒遅れで集団は14周目に入る。ジャラベールは再び遅れている。前輪のタイヤがパンクしたらしい。2人のフランス選手がジャラベールを引いて、ジャラベールはなんとか集団に戻った。集団からマッタンがアタック!頭には今年のパリ〜ルーベでムセウが優勝していた時つけていた「フランドルのライオン」バンダナを巻いている。先頭の5選手は14度目のティマレクの坂に入り、ディルーカ(イタリア)がアタックした。しかし、のぼりきったところでまた5選手になる。集団はブロッシャール(フランス)がティマレクの坂で加速。ほどなくして、集団に吸収された。集団の前方にイタリア選手が出てきた。バルトリもいる。トップで、ディルーカが再びアタック。残り67キロ。(15時20分現在)

 トップを逃げていたディルーカにモロー、マリシャル、ブシャが追いつき先頭は4選手になった。2分25秒遅れで集団が続く。集団からブロッシャール含む6選手が飛び出した。集団と少し差が開いたが、また集団に吸収された。集団の前方にイタリア選手、フランス選手たちが陣取りはじめた。ボーヘルト(オランダ)の顔も見える。有力選手は全て集団の前方にいるようだ。先頭の4選手は16周目(残り56、6キロ)に突入し、集団との差は2分23秒。集団はスペイン人が引き始めた。三船選手に聞いたところ、「スペイン人が引き出したね。オランダも先頭に選手がいないから、引き始めるんじゃないかな?マリシャル(ベルギー)が先頭にいるけど、チミル(ベルギー)はもうそろそろアタックしたそうな雰囲気だね。ディルーカ(イタリア)がトップで動いているから、集団にいるイタリア選手たちはもう少し集団の動きを見るんじゃじゃないかな。今はまだ集団の人数が多いから、これがどう影響するかだね。チミルやバルトリはスプリントゴールになる事を避けたいだろうから。ラスト2周ぐらいで彼らが動き出すんじゃないかな?」とのこと。
 こんな事を書いているうちに、オランダ人が集団をコントロールし、17周目に入ったところで、いきなりイタリア選手が動いた!イタリア人5選手が集団をコントロール。バルトリがこのコースの難所レゾー峠でアタックした!バルトリ、怒りをあらわにする。気がつけば、逃げの集団の前方にイタリアの選手が余り残っていない。レベリン(イタリア)が先頭を引く。ボーヘルト(オランダ)、ハンバーガー(デンマーク)が集団の前にいる。今度は、チミルが動いた!集団との差が少し開く。逃げていた先頭の4選手がついに集団に吸収されてしまった。これからが、本当のレースだ。ヴィノクロフ(カザフスタン)がアタックした!うしろにウロー(フランス)がつく。ゴールまでラスト2周半。(16時5分現在)

 アルガン(フランス)がアタック。集団との差が少し開いた。誰もついて行かず。集団で落車があり、ティマレクの坂でジャラベールが遅れた。しかし、皮肉にも集団はアルガンのアタックで速度は上がっている。ティマレクの坂でアルガンは集団に吸収された。集団は、メルクス、ボーヘルト、ブロッシャール、チミルなどがいる。しかし、ヴィノクロフは集団から遅れた。かなり、ラスト2周に突入。集団の人数はずいぶん減った。ジャラベールは集団から1分4秒遅れで、ゴール地点を通過しリタイアした。3日前のタイムトライアルでは胃腸のの調子が悪く出走しなかったジャラベールだが、今日のリタイアの原因はただ足が足りなかった(力に欠けていた)だけと本人は話した。先頭ではB・ツベルクがアタック!集団を揺さぶる。次に、ブロッシャールがアタック。ブロッシャールはこれで今日6度目のアタックだそうだ。でも、決まらない。次は、バルトリがアタックした。集団は長く伸びる。しかし、なかなか逃げ切れない。今度はチミルがアタック。しかし、これまた差が開かず、チミルはあきらめる。シント(イタリア)が先頭を引き出した。これから、ティマレクの坂だ。動きはあるか?(16時25分現在)

 集団にはベルギー、イタリア、オランダのジャージが多いようだ。ティマレクの坂で、イタリア人がアタックした。その名もバルトリ!うしろにピッタリ、ライバルのチミルがつく。それも冷ややかな表情で…。せっかくのバルトリの努力もなかなかうまくいかない。ボーヘルトも動き出した。集団は動きが激しく、どうなっているのかよく分からない。メルクスがトップに出た。集団との差が少し開いた。集団はスペインが引いている。ラスト1周、メルクスがトップで4秒遅れて集団がゴール地点を通過した。メルクス独走でレゾー峠をのぼる。しかし、この上りで集団に追いつかれてしまう。集団の人数は25人ほど。先頭をレベリンが引く。チミルやボーヘルトが2番手についている。チミルがアタックした!誰も追わない。あっという間に、集団との差が5秒ほど開いた。集団はスペインが引いている。チミルと集団は8秒差だ。さて、これで決まるのか?でも、まだティマレクの坂が残っている。どうなる?(16時36分現在)

 うしろを気にしながら、チミルは一人でゴールを目指して走る。下りを走るチミルだが、最後の登りティマレクのために足を残しておかなければいけない。足を休めながらくだるチミルに集団が迫ってきてチミルは吸収されてしまった。残り7キロ。集団の先頭はスペインだ。フレイレの2連勝も夢ではないかも。最後のティマレク上りに入った。スペインがコントロール。もちろん、ここでイタリア人がアタック。しかし、バルトリではない。誰だ?ボーヘルトがアタック。歯をむき出して上る。しかし、これまただめだ。カサグランデ(イタリア)が7番手からものすごい勢いでアタック!差がみるみる開く。4秒くらいは開いた。チミルが集団を引く。ボーヘルトもうしろにいる。しかし、カサグランでとの差は縮まらない。ティマレクを上りきって、ゴールまでは2キロほどだ。チミルが集団からアタックした!見る見るうちにカサグランデを抜かし、残り1キロ。トップで最後のゴール直線へ。しかし、うしろから集団が迫ってきた。そして、チミルは集団に消え、ゴール300m手前、集団からバインシュタイン(ラトニア)が出てきて、そのまま一気に両手を上げてゴール!2位にスプルッチ(ポーランド)、3位にフレイレ(スペイン)。バインシュタインはヴィニカルディローラでスプリンターとして活躍している選手。日本人にはまだ馴染みない名前だが、スプリンターとしてヨーロッパでは知られている。来季は新チームのドーモで走るそうだ。(16時50分現在)HP(Cool)の調子が悪くUP遅れてしまいました。ごめんなさい。

最後に三船選手に話を聞きました。「ヴァインシュタインも勝ちそうだと思っていたけど、国のチームプレーとしては期待できなかったから、本当に勝てるとは思ってなかった。今日のレースは各国チームプレーがみられて、世界選手権らしいレースだった。それに、動きいろいろあっておもしろかった。最後アタックをかけたチミルに勝って欲しかったけどな。ゴール前に少しのぼってるのがあかんかった。」

1. ヴァインシュタイン(ラトニア、ヴィニカルディローラ)  6時間15分28秒
2. スプルッシュ(ポーランド、ランプレ) 同タイム
3. フレイレ(スペイン、マペイ) 同タイム
4. バルトリ(イタリア、マペイ) 同タイム
5. ステインハウセー(ドイツ) 同タイム

 

【千穂のちょっとした話】
 ラスト1周は目が離せない展開でした。ティマレクの後半でカサグランデがアタックした時に、もうこれは決まったと思いましたが、そのあとのチミルのガッツはすごかったです。でも、最後の最後で集団に吸収されてしまったチミルとは…あれだけ、バルトリとレースを盛り上げていたのに残念でした。でも、これが自転車レースだから仕方ないですが…

 「ちょっと気になった場面があって、ラスト1周前にティマレクの坂でバルトリが逃げた時に後ろを向いて怒ってたけど、あれはフレイレに向かって怒ってたんちゃうかな?」と三船選手は言っていたので、早速録画したビデオをみたところ、ティマレクの坂でアタックをかけたバルトリのうしろにチミルがつき、集団と差を少し広げたバルトリはうしろを振りかえり少し加速、もう一度振りかえり走り、3度目に振り向いた時にすぐうしろに迫っていた集団に怒りをあらわにしていました。その集団を引いていたのがフレイレ。そのフレイレ、バルトリのジェスチャーを見て、後ろを振り向き、バルトリの怒っている原因はおれか?ってな顔で集団を引くのをやめていました。この2人、普段は同じチームのマペイ。バルトリは、スペイン人のフレイレが集団をコントロールして抑えてくれると考えていたのでしょうか?それとも、怒った原因は他にあるのでしょうか?真相は定かでないですが、こういう事が起こるのも世界選ならでは。それにしても、今日のバルトリはよく怒っていたな。なんとしても勝ちたかったんでしょうね。


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